小林亮オフィシャルサイト

アキラのタイコ放浪記Ver.2

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プロ根性

February 16 2007
昨日は久し振りに船の中での演奏だった

昼過ぎまで学校で授業をし、飛び出して車に乗り
急いで神戸へと向かった

高速もガラガラで予定より早く到着できて良かった

だって・・・もし遅れたら・・・
船出てしまうから・・・

なんだか貸し切りパーティーらしく
船内レストランのステージでのジャズ演奏だった


この数日と言えば・・・


春一番が吹いた程の強風・・・


だから揺れる揺れる・・・


スネアを叩こうと思ってたのに隣のフロアタムを叩いてしまうぐらい
大きな揺れだった・・・(もちろん嘘である)




あまりの揺れだった為・・・

あの日の事を思い出した・・・




だが・・・その話を書く前に・・・

前説として、こんな話をしておきたい

俺が行っている専門学校にはアンサンブルの授業がある
言い方を変えれば・・・いわゆる合奏する授業である

その授業の結構初期の段階で必ず指導する項目がある

それは曲の最後の瞬間(エンディング)を皆でピッタリ合わせて終わる
と言う当たり前の様で結構出来ていない事を指導するのである

分かりやすく言えば曲の最後に

「ジャカジャカジャカジャカ〜」

と音を延ばしておいて、最後に

「ジャン!」

と締めて音を切る作業である

その瞬間までが曲であり、そこまでが演奏なので
気を緩めないで最後の一音まで責任を持って
演奏しなければならないのである

だが・・・もっと驚くのはボーカルの生徒・・・

酷い時なんか自分が歌い終わったら
楽器の人達がエンディングを演奏してるのに
さっさと自分の席に戻ったりするのである

だから・・・

そんな事は絶対にしてはいけないのだ!
みたいな事を指導したりするのだ!

それから俺はドラムの生徒に必ず言う事がある

ドラムとゆう楽器は絶対に止まってはならないと・・・
ドラムが止まると他の楽器も止まってしまい
演奏全体が止まってしまうと・・・

何があってもドラムが先に止まってはいけない
他の楽器が一つでも鳴っているのなら
ドラムは叩き続けなければならない
他の全員が止まって初めて・・・
自分も止まろうか悩んで良い!と・・・











あれは俺が20代前半だった頃だ




俺が所属していた仕事のバンドに
豪華客船での演奏の依頼が入ってきた

その内容は、西日本周辺を周回する客船で
確か1週間ぐらい船の中に缶詰になると言う仕事だった

お客さんは2〜3日で違う人達に入れ替わるのだが
スタッフは勿論、バンドはずっと船から降りれないのである

確か2回ぐらいだけだったかな・・・?
何処かの島で2〜3時間のみ下船が許された記憶がある

いくら大きな豪華客船と言っても
最初の2日ぐらいで飽きてしまう

だって仕事って言ったって1日に30分ぐらいのステージを
2回程するだけで、後は何もする事が無いのだから
船内見学もすぐに終わってしまうのだ

当時このバンドで俺は一番下っ端で年齢も一番若かったのだが
幸いメンバーも楽しい人ばかりで空き時間も退屈する事無く
なんやかんや船内監禁状態を満喫していた数日目の事だった・・・

前の日の夜中から寝てても気持ち悪いぐらい波が荒く
船は大揺れに揺れていた

朝目が覚めても気分が悪いまま、朝食を食べないメンバーも多かった
そして昼になっても揺れは静まる事も無く、酷くなっていく一方だった

そんな中メンバーの一人が犠牲となった


第一被害者である


真っ青な顔をしてトイレに駆け込み
何度も何度もリバースする


お客さんにも被害が出ている様子だ


そんな状況を見てメンバー全員が
今日のステージ中止を疑わなかったその瞬間


「お客様にご案内申し上げます」
「まもなく○○時より、○○ホールにおきまして」
「○○○○によります○○ライブが行われます」


マジで?


15分前やん!


絶対に中止だと信じていたメンバー全員
急いで着替えて準備をしていた
その時だった



第2の被害者が・・・



それは・・・



俺だった・・・



後10分ぐらいで本番がスタートすると言うのに
この込み上げてくる異物感

衣装に着替えるだけ着替えてトイレに駆け込んだ

なかなか治まらない吐き気と戦いながら
便器を抱きしめる俺に・・・


「アカン小林! もう時間や!」
「先に行くぞ! はよ来いよ!」


メンバーの一人がトイレまで迎えに来てくれたのだ


無理矢理 胃の中も物を全部(胃液一滴まで)
出し切り、走って会場に向かった

既にメンバーは板付き状態で俺を待っており
司会の人がバンド紹介をしている中、小走りでドラム位置まで行き
なんとかギリギリ間に合ったのであった


そして演奏が始まった


演奏中も揺れは激しく、ボーカルを始め立って演奏する人達は
揺れる度に何歩か大きくよろめく程だった

ボーカルさんは何回もスタンドマイクから離れてしまう事もあり
途中から大きく足を開いて立つ裏技まで身に付けていた

こんな過酷な状態でも我々に与えられた30分間は
何があってもステージの上に居なければならないのである


そしてライブの終盤に差し掛かった時だった


俺の(ドラムの)右に位置するキーボードの方から
演奏中に俺を呼ぶ声がしたのだ

ふと右方向を見ると、キーボーディストが真っ青な顔をして
俺に何か言っているではないか

演奏中の為、よく聞こえなかったのだが
何度も何度も何かを訴えている様子なのだ


すると運良く一瞬だけ何かが聞こえたのだ


その言葉は・・・


「もうアカン!吐く〜!」


俺は慌ててその先輩キーボーディストに言った


「トイレ行って下さい!」


すると彼は首を横に振ったのだった


演奏中の為、動くことも出来ない俺は
この危険な状態を何とかしなければと必死に考えた

このバンドは男性ボーカルと女性ボーカルと
二人のボーカリストが居た

たまたま男性ボーカルの曲中だったので
女性ボーカルはドラムの前で踊っていたのだ


俺は大きな声で女性ボーカルを呼んだ


そしてキーボーディストが吐く寸前だと言う事を伝えた

すると慌てた女性ボーカルは舞台袖に行った

一瞬で何かを見つけた彼女は急いでキーボードの所に
それを持って行ったのだった


それは何か容器の様な物だった


それを手にした彼は


自分とキーボードの間の床に


それを置いた




次の瞬間




俺は見てしまった


彼の口から


その容器に向かって


滝のような


異物が流れるのを





しかし彼は立派だった




下を向いて吐いている彼の両手は
決して鍵盤から離れる事は無かった

この日から俺は彼を尊敬する様になった

(数年前から彼は東京で俺は大阪で活動しているが
今でもよく電話で話したり仲良くさせて貰っている)



その大量のリバースを最後まで見届ける勇気が無かった俺は
途中で目を反らしてしまい、その後も彼を見る事が出来なかった


そんな俺を・・・


彼は再び呼んだのだ・・・


呼ばなくてもいいのに・・・


仕方が無いのでキーボードの方を見た・・・


すると口の周りがベチョベチョの状態のまま
涙目なのに何故か笑顔で俺にこう言った



「吐いてもた!」



一部始終見てましたので・・・

説明されなくても知ってます・・・

それよりも早く・・・

口の周りを拭く方が良いかと・・・



しかし吐いている途中でも鍵盤から手を離さない彼が
演奏中に口を拭く為に鍵盤から手を離す訳もなく演奏は続いたのだった



そして何とかステージは進み


残すは最後の1曲となった


バンド最大の危機を脱出したと


誰もが思っていた


しかし神は我々に


更なる試練を与えてきた


それは・・・





異臭騒ぎである





そう!


先程彼がリバースした異物が放つ異臭が
ステージ中に充満し始めたのである


この大きな揺れの中、何とか耐えてきたメンバーだったが
(キーボードは耐えれなかったのだが・・・)
これにはノックアウトだった

普段の正常な状態でも「もらいゲロ」ってするぐらいなのに
こんな状況でこの臭い嗅いで平気な訳がない


徐々にメンバー全員の顔色が悪くなる

(たぶん聖飢魔?の次に顔色の悪いバンドだっただろう)


でも・・・


この曲でステージは終わりだ


しかし・・・


すでに喉の辺りまで異物が上がってきている状態だ


メンバー全員が必死に耐える


そして待ちに待ったエンディングが近づいてきた


しかし同時に我慢の限界がやってきた




最後のフレーズを歌い終わった瞬間
ボーカルが走って居なくなった



そして曲はエンディングに突入し
もう一人のボーカルがエンディングに合わせて
最後の挨拶をし、ステージから消えた



残すはバックのメンバーで・・・


「ジャカジャカジャカジャカ〜」 「ジャン!」


を・・・やるだけだ・・・


そして・・・


その時がやってきた!


すると・・・




「ジャカジャカジャカジャカ〜」



の途中だった・・・



ギターリストが走り出し・・・



ベーシストが消え・・・



先程リバース済みのキーボードが去っていった・・・



そしてステージに取り残された俺は・・・



たった独りで・・・







「ジャン!」







プロとして今年で15年になるが
俺が一度だけ体験した

独りで 「ジャン!」

の話でした・・・




俺はたまたまステージ前に吐ききっていたので
耐えれただけの事で、ホンマ皆凄いと思った

一番下っ端だった俺は、大先輩達に囲まれ
プロの厳しさ、プロの根性を勉強する事が出来た
本当に心に残る仕事だった




おまけエピソード!




会場からお客さんが居なくなってから
キーボーディストが吐いた容器を片付けに
メンバー達でステージに戻った


するとキーボードの周りが「ゲロ」だらけではないか!


確かに容器に向かって吐いたのを俺は見ていた!


結構コントロールも良かったはず!


なのに何故・・・?





そこで問題!


容器に吐いたはずの「ゲロ」が
どうして床一面に広がっていたのでしょうか?


答えは後日!笑






| Category:思い出話し(爆笑編) | 11:29 PM | comments (5) | trackback (0) |

新着コメント(最新5件を表示)

ワタクシ昨日の飲み会で7時間のんだのに…意外と元気!と思ったら
リアルリバースの話で結構えづいてしまいました。うげげ…
飲んだら読むなの話でしたね(笑)要注意書きです。

でも、すごいぷろ根性!涙なくては語れません……
楽器が○ロまみれにならなくてホントによかったです★
見てたお客さんもキツかっただろうなぁ…

| かおみっくす | EMAIL | URL | 2007/02/18 06:10 AM |

いや〜辛いですね… 
船の揺れだけはほんと、シャレになんないですよね〜
私は、つわりの時に、一日の最後の生徒のレッスンで、それと戦っていたのを思い出します。
「ありがとうございました〜」
「また来週ね〜 気をつけてね〜」
ガチャン
の瞬間エチケット袋…
を、何ヶ月か経験しました!

| ぽん | EMAIL | URL | 2007/02/19 01:13 AM |

>かおみっくす
文章読んで想像して気分が悪くなるとは
素晴らしい想像力の持ち主!笑
吐いた先輩ですが、お客さんには極力
分からない様に努力されてましたよ!笑

>ぽん
つわりって経験ないので分からないけど(当たり前か!)
辛いんでしょうな・・・きっと・・・
だってあの吐き気が何日も?何ヶ月も?
続くんだからね・・・恐・・・

| Akira | EMAIL | URL | 2007/02/20 06:50 AM |

ころ??す!!

あれはなんやったんや!!一体??

| しんず | EMAIL | URL | 2007/03/02 10:31 AM |

>しんず
そんなん言うたら主役やってバレるよ!笑

| Akira | EMAIL | URL | 2007/03/03 03:33 AM |

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